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第1章~一時代の終焉~

第1章~一時代の終焉~




第一話 海原に吹く風 NEW!!














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第一話 海原に吹く風

2008年末、アメリカのサブプライムローン問題がその引き金を引くことになった。


100年に一度といわれる金融危機。

アメリカはビックスリーなど大手企業が相次いで倒産。中国の経済成長も北京オリンピックを最後に急停止した。

先進国を初めとする全世界が甚大な打撃を受けた。



日本も例外ではなく、東京には失業者が溢れかえった。

政府は景気回復の為、2012年に発足した新内閣が「新規防衛力整備計画」を公約に掲げた。

その内容とは、国産兵器の量産を計り、未曾有の大不況を工業奨励で乗り切ろうという考えだった。



世界恐慌と同時に大国アメリカでは選挙により非戦派の大統領が当選。

各地の軍備縮小や撤退を初め、世界の警察の立場から退こうとしていた。



しかしこれにより中東の紛争地の軍事バランスは崩れだす。

極東、北朝鮮では総書記の後継者問題で内戦が発生。


そして、経済成長にブレーキのかかった中国は都市と内陸部の農村の経済格差により民衆の不満が爆発するのは時間の問題であった・・・










2020年、4月18日。海上自衛隊横須賀基地―

あたご級イージス艦「あしがら」艦内射撃訓練場―


射撃を終えて僕は、ピストルを標的に向けたまま大きく息を吐いた。

12発の弾丸を連射した後の腕は、慣れているとはいえ痺れが残る。

だけども、なぜだか今日は体全体がしびれるような感覚だ。

僕は、無意識のうちにもう一度弾丸を装填してトリガーを引いた。



「いつまで打ってるつもりだ?」

コンクリートで出来た射撃場に安達の声が響いた。

安達は、同い年の同僚で僕が「あしがら」に配属されたときに知り合った。

私生活ではよき友人だったが、艦内ではライバルだった。



「飯は食わないのか?」

安達はコンクリートにカッカッと軍靴の音を響かせながら尋ねた。

「ああ、今行くよ」

僕は簡潔にそういって、銃の引き金を引いた。



この日はものすごいスコールで、午前中に船の甲板に出たときは台風のような嵐が吹き荒れていた。

僕はそのわずかな時間でずぶ濡れになって帰ってきた。



午前の10時には横須賀基地を出発して、太平洋の海原に繰り出す予定だった。

海上巡回は定期的にあって、1週間ほど大海原ですごす必要があった。

僕は視線を軽く落とし、左腕につけた時計を見つめた。

時計の針は正常に休む間もなく動き続けている。

9時15分を回ったことを確認すると僕は、洗濯物を取りに洗面室のほうに歩いていった。





洗面室から戻る途中、見覚えのない男とすれ違った。

海上自衛隊の制服ではなく、スーツを着た中年の男だった。

僕はどこかで会ったことがある気がしたが、気に留めることはせずに今度は食堂に向かった。


食堂には安達が朝食の片づけをしていたので、右手でジェスチャーをした。

安達も皿を洗いながら左手で返してくれた。

僕の席にはまだ暖かいカレーと金属のスプーンが置かれていて、僕は数分で平らげた。



食器を安達に渡すと、彼は慣れた手つきで数秒で洗ってしまった。

彼は非常に手先が器用な男だった。

安達が食器を片付け終わって僕と二人で発令室へ向かった。



発令室のドアを開けると、目の前にスーツ男が立っていて、ぶつかりそうになった。

「・・・失礼」

男は低いトーンの声で言った。

その男はさっき洗面室の前ですれ違った男だった。

「すみません」

僕は反射的に口を動かした。


発令室から出て行こうとする男を、西沢艦長が思い出したように呼び止め、

「こいつは・・・佐竹さんの息子さんだ」

といった。



佐竹とは僕の苗字で、僕の父親はまだ僕が幼いときにテロで亡くなっている。

僕の父のことを、僕は良く知らない。

僕がまだ幼かったというのもあったし、父は常に諸国を飛び回っていた。

大学に僕が入学したくらいに、父がどのような仕事をしていたかを祖母から聞いた。


祖母は父が政府の人間だったことを教えてくれた。

そして、祖母の話では父は国家機密の計画の責任者だったそうだ。

しかし、父がその計画を完結させることはなかった。


テロがあった日は夏の暑い日で、海を見たいといった僕に「ドライブ」という名目で海に連れて行ってくれていた。

今の僕の推測だと、仕事の合間を縫って僕を海に連れて行ってくれたのか、

仕事で向かうはずだった所がたまたま海の近くだったかのどちらかだ。

おそらく後者だろう。




スーツの男は驚いたように肯いて、「もうあれからそんなに時がたつのだな・・・」と感慨深く言った。

それから少し時が止まったように、そこに居た全員が動くのをやめた。


ドーンと雷の音がして、船が少し揺れた。

それで男は我に帰ったように、挨拶もしないで去っていった。

「西沢艦長、彼は誰ですか?」

僕がたずねると西沢艦長よりも先に、後ろに居た安達が

「太田国防大臣だよ」といった。

国防大臣がなぜこの艦にきたのかを訪ねると、西沢艦長は「さぁな」と流した。



西沢艦長は都合の悪い質問をされるといつも「さぁな」と流す。

しかし彼の「さぁな」にはなぜだか説得力があった。

本当に彼が分かっていないかのような錯覚に陥るが、少したって考えると分からないわけがない質問をしたことに気づく。

このときもそうだった。




艦は予定より少し遅れて横須賀を出航した。

航海は太平洋の南に国境付近まで向かう。

出航から2日がたった朝、僕はいつものように甲板に出た。

360度、島ひとつ、漁船一隻も見当たらない、太平洋のど真ん中だ。

僕は航海のときは毎朝、この大海原を見つめ、自分が自衛隊員であることに誇りを感じることが出来た。

そして、雨が上がって今は静かなこの大海原が、もう二度と荒れないようにと祈っていた。

かつて旧日本軍の多くの先人達が散っていった太平洋・・・

今は静寂に包まれているこの海の底で、かつて壮絶な戦いで散っていった「戦友」たちが僕らを守ってくれている気がした。

しかしこの静寂が、嵐の前の静けさだったと、僕は知るよしもなかった・・・




プロローグ~

夏の日が高く昇り、海岸沿いの幹線道路を走る黒いライトバンの中は電子レンジのように熱されていた。

窓を全開にして、渋滞の前列が動き出すのをただ待っている。



白い制服の湾岸警察の男が覆面パトカーから降りてきて、無線機のようなものに話しかけているのが見える。

当時の僕が知っていた警察組織といえば、この白い制服の湾岸警察の他に、あまり表には出ないが国際的な現場で活躍する国家警察、昔からの伝統を重んじるブルーの制服に身をまとう公安警察の2つがあった。



あと2つ、山岳警察隊とS.W.A.Tの特殊部隊があるのを知ったのはまだ後のことだ。



警察組織はこの時より数年前に起きたテロ事件でそのずさんな体制が浮き彫りになり、いくつかの分派に分かれた。

それがこの5つの組織だった訳だが、それでも当時の僕達にはヒーローで、憧れの対象でしかなかった。

警察官はイコールで正義の公式があり、中でも国家警察の人気は群を抜いていた。




停滞していた車たちが少しだけ前に進み、また止まった。

真夏の照りつける日差しが容赦なく僕達を襲い、渋滞もまた、僕達をいらだたせる。

運転席の父にはいらつく様子はなく煙草を吸い続けている。



「お父さん、ケイサツがいるよ」僕がそういうと、父は煙草を口にくわえて肯いた。

僕は全開に開いた助手席の窓から顔を出して、青いパトランプを見つめた。

ラジオから流れる洋楽は当時の僕には理解できなかったが、父は曲に合わせて左手でハンドルを叩いていた。



「お父さん、中々進まないね」

父からの反応はなかった。

「お父さん、お父さん」

僕は反応がなかったことが不満で父親の左肩を叩いた。



父がこちらを向いたその直後、大きな爆音が響いた。

爆風が前回の窓から入ってくることはなかったが、車のサイドミラーが吹き飛ばされた。



僕は状況を理解できずに後方の青いパトランプを見た。

僕は衝撃で口を開け絶句した。

まるで映画のような炎を吹きながら、乗用車が2台、宙に舞い上がった。

息をつくまもなく僕達の車の前のトラックの荷台から、小銃を持った集団が降りてきて、

青いパトランプに向かって発砲した。



2人の警官は凶弾に倒れ、女性の悲鳴が響いた。

一瞬の静寂の後、いっせいに我に帰った人々が車から織り出し、散開し、走り始めた。

「テロだぁ!」



僕達の車はトラックの目の前にあったので、瞬く間に囲まれてしまった。

一人の男が車に向かい銃撃をしたとたん、父はアクセルをいっぱいに踏んだ。

前に居た2人のテロリストの片方が跳ね飛ばされ、もう片方は車にしがみついた。



大きな円形にヒビの入ったフロントガラスの向こうに銃を持った男がしがみついている。

車は見る見るうちに加速していった。ハンドルを切る振動で僕はドアに強く体を打ちつけた。

車は人をもう一人跳ねてしまったが、それが一般人かどうかは分からなかった。

ヒビとしがみつくテロリストの間に、大きなタンクローリーが移る。

父はハンドルを右側に傾けた。

すると車は幹線道路の柵を突き破り、太平洋の海に向かってダイブした。

テロリストの手が離れていくのが分かった。

そのすぐ後に僕は目を閉じて発狂した。



車は、海中へと消えていった。

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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